今ふたたび、そばの味革命コラム

Column

真そばの味研究所

嬉しいなぁ・有り難いなぁ・・・「ここのそばは革命的です」

忙しかった・・・そんな6月26日(水)は、今年3回目の売り切れでした。
そして、ボク等にとって、この日は、売切れ以上に嬉しい・良い日でした。
それを下さったのは、開店早々のお客様でした。
パートさんが「6番席のお客様が『ここのそばは革命的です』と言っておられます」と。
色々な言葉を頂いてきましたが、革命的・・・は初めてです。


6番席と景観・眺め
コロナ禍から、相席をしていません。

そばDa迷人にとって、この「革命的」の表現が何~故・有り難くて嬉しいか?。
説明させて下さい。

昔々地方で誕生したそば切り(手打ちそば)が、街道を通って江戸に伝わり、食べる人が多かったからでしょう・その味を美味しく・美味しく・・・と変えて行きました (新技法確立)。
その新技法は「江戸そば流」として確立され普及して行きました。


そば切りは中山道を伝って・江戸に?
(塩尻市観光協会資料より)

その中で、ある時、これまで使っていた蕎麦粉を目の細かい篩いでもう一度篩って得た蕎麦粉を使って打ったそばが美味しかった事から始まったのが更科そばの誕生です。
余談ですが、更科そばの語源はこの時に生まれた(ルーツ)ので、今流通している更科そばとは違っていると言えましょう。
それはさて置き、伝統的な製法に拘らず工夫する江戸そば流そばが美味しかったことから、江戸では、そばを毎日1食・食べるようになっていました。
世の中が落ち着き、食生活が向上した江戸中期になると、主食の米を更に美味しく・・・と白米にする様になって、江戸患い(脚気・ビタミンB1不足)が蔓延しましたが、そばはこれを治したとまで言われています。

江戸では、そばを更に・更に美味しくしようと言う考え方が続き、蕎麦の実を皮のまま石臼に投入する田舎そば(色の黒いそば)方式を「ゴミを食べさせる」と嫌って、そのゴミの混入除去や蕎麦の皮(外皮と種皮)の挽き込みを減らして行く製粉方法を開発した事で、江戸そば流は確固たるそば打ち技法の確立となりました。


収穫直後の蕎麦の実
外皮の上に、ゴミが一杯です。

当時から五穀の中に数えられていなかった蕎麦は、米の様に精米と言う作業(胚芽迄で除去)が無く、麺の中で唯一胚芽迄一緒に食べる穀物で、美味しくて栄養満点とこの時代から注目されていました。


蕎麦の実の断面写真
そばの胚芽(子葉)はS字を書く様に・・・中心部分に入っています。

余談ですが・・・そばも美味しくなかったら、粟や稗の様に、今では殆ど口にする事の無い穀物になっていた事でしょう。
その・更に美味しく・・・と言う努力・工夫は長い間続き、蕎麦粉の製粉段階で、挽き割りという工程が産まれました。
挽き割り機の無かった時代には、石臼の上下接面の間隔を開けて、細かく挽く事では無く、先ず大きく砕くと言う工程の誕生です。
月日の流れと共に、更に美味しく・外皮の混入を減らす・磨きと、石臼投入の前工程で、皮を剥く(脱皮・「丸ぬき」の誕生)行程・機械を開発して行ったのです。


蕎麦の実・丸抜き(剥き実)
深山赤城ファーム(群馬県)2023年産

皮を剥いた・丸抜き(剥き実)を石臼に投入すると、ゴミの混入から解放されて色の白い・上等なそばが出来るようになりました。
余談ですが、最近では、早刈りの青い蕎麦の実を使ったものまで登場しています。
これは、味はともかく綺麗(そばがグリーン)で食欲をそそります。
更に月日が流れ・明治時代になると製麺機の開発が行われて普及し始め、手打ちは不衛生と言われた事もあって、江戸ならぬ東京では手打ちそばは一旦姿を消しました。
が、昔の味を懐かしむ人達の手によって、戦後、江戸そば流のそば打ち技法が公開された(昭和20年代)事により、手打ちそばが復活し始めました。
昭和40年代には、この公開された江戸そば流の技法が全国に広まったことで、日本中のそばの味が革命的に美味しく変わりました。
うねりを上げるようにして復活した手打ちそば、その江戸そば流技法は、隠すところ無く指導書に記されたり、そば打ちを教える学校が出来る等で理論と技術が容易に継承されるようになりました。


手打ちそば復活時代のニューウェーブの
リーダー片倉康雄さんの本・今でもバイブルです。

その江戸そば流の教えの代表格は「1・鉢、2・伸し、3・包丁(美味しいそばを作るには捏ね鉢の作業が一番大切だと言う教え)」や「そばは3たて(挽きたて・打ちたて・茹でたてを守ってそばを提供する教え)」です。
そばDa迷人の真そば流は、この江戸そば流を基本にしていますが、更に自分好みの味に変えたい!っと幾つもの真逆な改善策を組み入れています。
その一つに、先の手打ち工程の中で一番難しいと言われる鉢の作業(1・鉢)は、教えを忠実に実体験で学べば、真逆の一番簡単で、次に、これで仕上げた物を味の確認作業をして行くと・・・説明されている様な粉への均一な水回しは美味しくする作業では無く、水溶性タンパク質の性質を利用したそば(麺)を長く繋ぐために重要な教えであると体感しました。


江戸そば流・某老舗の・・・長すぎるそば!、
確かに腕は良く見えるが・・・食べにくい!。
(WEBより)

美味しい麺作りはそばを繋ぎ過ぎない事と実践するそばDa迷人(真そば流)は、重要だ・・・と説明される加水(適量!は真そば流も絶対条件)と水回しは、何度も何度も失敗を繰り返して「そばを美味しくでは無い」・「そば(麺)を繋ぐ」に欠かせないもので、切れてしまった(失敗)麺でも素材の良い物は美味しいんだ!と体得しました。
麺となったそばの味を左右する一番は素材の善し悪しで、これを入手する事・選べる目と知識を養う事こそ重要な条件だと思う様になりました。
そして、そばを美味しくするために欠かせない熟練が必要な技法は、江戸そば流では最も簡単と言われる包丁(切り)や伸しの工程に有ると考える様になりました。


伸しの作業の確認
切りは16枚畳みで・・・。

それは、そばを更に自分好みに美味しくしたい!・真そば流では、江戸そば流の教えの「切ベラ23(切ベラ23は1寸=3.03cmを23に切る)」を「切ベラ30(玄蕎麦の状況により切ベラ35とする事もある)」としています。
これは、人間の手仕事・・・切ベラ23での合格も、ほんの少しの手振れで生じる誤差が、切ベラ30では味に影響し、不合格となります。


切ベラ30・・・未だ未だですネ

大きな失敗を何度も・何度もする度に、包丁を止めて機械化だ~と考えましたが、麺を1mm以下に仕上げる麺切り機を今は見つける事が出来ませんでした。
趣味の時代からすればそば打ちを開始して35年目・後期高齢者となって、やっと合格点の入口に来たかなぁ~と振り返っています。
伸しも、切ベラに連動していますので、10割そばでの均一で極々薄伸しは、かなりの熟練を要します。
江戸そば流そば打ちで最重点の鉢の作業を一番簡単と否定し、最も美味しいと感じるのは切りべら23の教えを、更に美味しくするには切りべらは30以上(35をもう少し検証してみます)と考える事で、真そば流を後世に残したいと考える様になりました。
あれ・あれ・・・力説が過ぎますね・閑話休題。

又、確かに、外皮に付いた汚れを、今では外皮を剥いて取り除くので、汚れの味は無くなりましたが、外皮毎挽くそばに「魔物が棲む」と言われた、そば特有の妙味まで無くなりました。
そばDa迷人の口(味覚)は、今の江戸そば流の当たり前の素材となった・剥き実・を使ったそばが、爽やかだが物足り無いと考え、他店でこれを食べる毎に「やっぱりここも・・・かぁ~」と物足りなさを感じているのです。
又、経済的な理由から分業化が進み、手打ちそば屋には大変な労力である自家製粉を止め、蕎麦粉屋さんから粉を購入する店が多くなりました。
これは・・・何処で食べても同じ味・言うならば粉屋の味となっているのです。



上は、江戸そば流で「最高の状態」と言われる蕎麦粉
下は、真そば流で「最高の粉」・自家製粉の蕎麦粉

これが、打ち方で、素材の持ち味を最大限に生かした味であれば、それはそれで、不満もありませんが、製粉会社の経営は、色んな出来事を乗り切るには原材料費を抑え無くてはならず歩留まり率を上げ、効率よく製粉しなければ為りません。
粉選びは、よくて、粉屋さんが挽き変えている銘柄から選ぶ程度で、希望の粉を挽いて貰う事は出来ません。
企業経営を考えれば、致し方ない事です。
江戸そば流の誕生の頃のそばの味は、秘技秘伝の賜で他と違いがあり腕の見せ所でしたが、中期頃には、そばを打つ者や他の職人も派遣制となり、驚く事にそば屋の店の味はそばでは無く、大将が自ら秘技秘伝で作るつゆの味となってしまいました。
戦後の江戸そば流技法の公開は、老舗の味がそばの味では無くつゆの味なら、そば打ち技法は公開しよう・・・となった訳です。
この時代には、脱皮機(次いで粒揃え機も)の普及と言う画期的な変化(黒いそばから白いそばとなり、見た目も美味しく・そばも打ち易い)も加わり、江戸そば流はアッと言う間・革命的に日本中に広まりました
が・・・残念ながら何処で食べても大きな違いが無くなり・同じ味となってしまいました。
つまり、何処で食べても手打ちそばは・江戸そばの味・・・で、極端に言うともう1世紀以上に亘り、その味が維持されているのです。
この間に、江戸そば流を実践し教える手打ちそばのニューウェーブと言う人が生まれ、第一次ニューウェーブ、第二次ニューウェーブ・第三次ニューウェーブの時代を経て、今は第四次ニューウェーブ誕生とさえ言われていますが・・・。
残念なのは「手打ちだから美味しい」が俗説的に言われるようになり、江戸そば流の範囲内での変化(素材銘柄や産地の違い)しか感じられません。
本当に、そばは手打ちそばだから美味しいのでしょうか!?・そばDa迷人の考えはノーです!。
25年前の出会いですが、同じ様な考えの人がいました。
包丁で不揃いの手打ちそばの不味さに気づいたそば屋さんです。
彼は「手打ちを止めました」と均等・均一製麺を目的に、機械製麺に移行していました。
水回し迄の作業(鉢)を手で行い、精度の要求される伸しと切りを機械化したそば屋さんです。
このそばの味に感動しました。
余談ですが、味に感動は出来ませんでしたが、老舗と言われるそば界の大御所店では、ここと同様で、殆どの店が同様(伸しと切りが機械)の製麺方法です。
つまり、江戸そばの教え「1・鉢」は手で行っているから・・・の妥協です。
ここでは詳細を割愛しますが、今の時代、経営上の課題で・完全手打ちそば屋では正規従業員は雇えません。
ここで見られるように、均一仕上げが手打ちそばの美味しさの条件で、手打ちならそばは美味しい!と乱暴な製麺方法を手でやるそば屋より、一部機械化したそば屋の方がはるかに美味しく・存続可能なのです。
大都市に存在し続ける大御所店は、「手打ち」を看板にしなくとも、老舗の評判でお客様が切れないので、味はそこそこであれば何の不自由もないのです。

反対に、「手打ちではあそが一番美味しい」と推薦して貰ったそば屋で、「手打ちそば」の看板を見て入店しましたが「あれ・この味?」と感じて「向学のために教えて下さい。このそばは本当に手打ちですか?」と尋ねると「外にトラクターがあったでしょ。ソバ栽培をやる手でそばは打てません」と訳の分からない説明をした大将は厨房に消えました。


堂々と・手打ちそば・実は・・・
機械装置の味でした。

又、同様の質問に「分かりましたか・・・。でもウチは一番大切だという教えの鉢の作業までは手でやって伸しと切りを機械でやってるだけだから手打ちだと考えています!」と言う店もありました。
どうせ味なんて分かりゃしない!と思っているのか?、何の法規制も無い(手打ちそばの定義)事から一部機械製麺を隠して「手打ちそば」を標榜する・・・売上欲しさのそば屋が存在しているのも事実です。

そばの里深萱ふ~どは、店を建てる時に、設計士さんに「石臼やそば打ち台を見える所に置かないで欲しい」とお願いしました。
店の看板にも「手打ち」の文字は入れていません。


県道からの入口の看板
道案内だけを目的としました。

これは・・・食べた人の口で味を判断していただき、美味しいなぁ~と感じて貰えたら、手打ちだからかな?!と推測して欲しいからです。

余談ですが、石臼製粉や自家栽培の事、手打ちそば専門店で有る事を含めた他店との違いや特殊な改善箇所は、事前にお客様にPRすることでは無く、試して頂いて、初めての味等違いを感じて貰った・当店のそばの味に興味のある方だけに話せば良い事だと考えています。
手打ち・石臼製粉・自家栽培は、自分好みのそばの味を追求する手段で、宣伝道具では無いと考えています。

江戸そば流が公開されて日本中のそばの味が革命的に美味しく変わった時の様に、いつか伝わらないかなぁ~真そば流技法、この思い・否願いは、そば屋さんや粉屋さん・栽培農家さんに・・・です。
ご縁のある方・・・この願いの実現にお力添え頂けたら、最高の喜びです。
これが叶えば、日本中のそばの味が再び革命的に美味しく変わる・そばルネッサンス(日本を健康に、今再び・そばの味革命!)ですよね。
40歳までそばが大っ嫌いだった男がそば屋のオヤジなので、生涯かけて更に自分好みのそばの味を求めて、真そば流技法を極めて行きます。


夢をのせて・・・真そば流の本を出しました。
そばの里深萱ふ~どの客室のみ・で・販売です。

我流、極めれば新流。
極めなければ、ただの我流。
確実な加齢なる変化を感じ始めましたが、出来るところまで、我流極めを楽しませて頂きます。

そして、忙しかったこの日の最後のお客様は、時々ご夫婦で来て下さる方でした。
帰られる時に、女将のチャーボーと話されたようで「昨日、静岡の有名店にそばを食べに行って来たが、今日は口直しで来た。やっぱりここが一番美味しい」と言って貰ったよ・・・と伝えてくれました。
食べ物の最大条件は、美味しい事!と考えています。
美味しい・・・は、味覚による・否ぁ~時にそばは味覚で無く、視覚・聴覚・知覚(そば通と言う知識味)?も有るかなぁ~?なので、全員が同じとはなりませんが、食べ物の味を決定する5基礎味を大切にする人なら、何割かの人と同じ様になれると考えています。

それが野球なら・・・大谷翔平君まででは無くとも3割(打者)なら凄い事。
又、今じゃ選挙も棄権が多く、半数割れの投票率で首長が決まってしまうと言っても過言無い時代となりました。
50人もが立候補して今行われている東京都知事選挙の前回の投票率は55%で、圧勝して都知事となった小池さんの得票率は59.7%でした。
この得票数を、有権者数で割ると・・・なんと言うのか分かりませんが、支持者が32.84%であれば圧勝し、東京都が動くのです。
今回は、もっと減る事でしょう(?)。
人口の3割もの人に支持して貰えれば・・・日本は動きます。
そばDa迷人1人の顔晴りでは不可能でしょうが、この日の様な同じ味覚の人達の表れとそば界のルネッサンスを夢に「日本を健康に、今再び・そばの味革命!」の歩みを、愛する妻チャーボーと、出来るところまで続けて行きます。
こんな事をホームページ他に上げているのは・・・明日のお客様が欲しくてのPRでは有りません。
そばルネッサンス・真そば流の革命的な味の普及を夢に見ているからです。
気にかけて頂いた方は是非、真そば流の味を試して下さり・・・感想が頂けたら幸せです。
又・又・・・これを励みに顔晴りま~す。

そばDa迷人(そばだめいと)

夢とそばを楽しむ会

Meeting to enjoy dreams & soba

そばで日本を健康に!&日本を真の先進国に!と楽しい夢を見る会です。
会長さんや会計さん…お偉いさんは存在しません。いるのはそばの里深萱ふ~どのオヤジ・そばDa迷人が務める“用務員”さんだけ。
とにかく楽しい夢を描きましょう。