今ふたたび、そばの味革命コラム

Column

真そばの味研究所

「真そば」は・・・「新そば」を越える!

「真そば」は「新そば」を越える!・・・そばDa迷人の「真そば流そば作り」・「ソバ作り(栽培)・蕎麦作り(石臼自家製粉)・そば作り(手打ち)」の内、蕎麦作り・石臼自家製粉に関するとっかかり部分の奥義を一部公開します。

その前に・・・、昔々そばが大っ嫌いだった(40歳頃迄)男・そばDa迷人がそば屋のオヤジになったので、その目標は「そば好きを一人でも多く作ること」と定め、売上増を目的とする新ソバPRやそば屋の超繁忙期・年越しそばの営業もやらないでいます。
代わりに、近くのお寺で、除夜の鐘を撞きに来た人に熱々の手打ちそばを振る舞うそば会に協力してきました。
ここのご住職さんが「そば屋の大変な日に休ませてしまって申し訳ない・・・」と心配して下さるので「ならば!」と、数年前から昼は営業して、夜に出掛ける様になっていました。
例年、このそば会が年明けの深夜までかかるので、その片付けを正月に残し、元旦はお片付け・・・が恒例でした。
が・このコロナ禍、2年続きで、そのそば会が無くなりました。
つまり、お正月・特に元旦の恒例行事であるお片付けが無くなりました。
唯々お酒を飲んで・・・寝正月と決め込む事は、性格上出来そうもありません。
前日まで雪交じりの天気予報も、元旦と2日は快晴に変わりました。
ならばこの日に1年分の玄蕎麦再調整(石抜きと磨き)をやろうと決意した訳です。

再調整は「石抜き」→「磨き(中古の循環式精米機)」→「石抜き」の順で行います。

客室の北の窓から30m先に見えるログハウスの農業倉庫の中に、大きな冷蔵庫が2台有り、ここに1年分の蕎麦の実(玄蕎麦)を収納しています。
この蕎麦の実、自家栽培の坂祝産と福井と茨城の契約栽培農家産から直接仕入れた物です。
両農家さん、農協等に卸すのでは無く、そば屋さんへの直接販売が主となっています。
つまり、自前の調整(ゴミ取り、乾燥、石抜き、磨き)は完成しており、大方のそば屋さんは、そのまま石臼に投入しています。

昔々・ソバが手刈り天日干しだった頃は、この調整をする機械が無く、完成した蕎麦の実も調整不十分で、結果そばの色が黒かったりジャリジャリするのが当たり前でした。
江戸そば流では、これを「ゴミが混じっている」と嫌い、やがて皮を剥いて(剥き実)製粉する様になりました。
そばDa迷人は、この剥き実の粉を使って打ったそばが好きになれません(物足りない)。
そこで・・・農家さんから製品(商品)として納品された玄蕎麦を、極力ゴミの元を減らすために、自分の手で徹底的に再調整(綺麗に)する訳です。
これが・・・1年分の蕎麦の実を一気にですから、大変な作業となります。
だったら使う分だけ、使う直前の作業で・・・と思ったのですが、これでは蕎麦が不味くなってしまいます。
厳寒の時期に蕎麦の実を冷水に晒したと言う「寒晒し蕎麦」からヒントを得て、この季節に集中して行うこととしました。
「寒晒し」は、何故厳寒の時期?、しかも厳禁である水で洗う?(真そば流では「晒す」をを「洗う」としか解釈していません)について考えました。
ソバの発芽行動は、14℃となったときに活発となりますが、0℃でも幾らかは発芽行動に移ります。
つまり、14℃以上の気候となり、少しでも水分を感じると、蕎麦の実は一斉に発芽行動に移ります
最近、発芽蕎麦を謳う店が増えて来ました。
信州大学の井上直人名誉教授の「そば学」の影響も大きいと考えますが、そばDa迷人は、発芽させて直ぐに打つ場合は良いかもしれないが、発芽行動に移った玄蕎麦を貯蔵した場合は良くない(不味くなる)と考えています。
否、経験から、不味いと考えるに至っています。

ソバは、他の作物の様に、雨が降らないと発芽できない植物では無く、ほんの少し・トラクターで耕した時に土の色が変わる程度の土中水分を感じただけで、気温が14℃以上になっていれば発芽を始めます。
しかも、5日もあれば畑一面生え揃います。
穀物用冷蔵庫で保管していた玄蕎麦(冷蔵庫保管で無く常温放置では梅雨以降に内部変化が起きる説には異議ありません)も、暑くなってきた梅雨の時期以降は、冷蔵庫から出した途端に露ぶき、玄蕎麦は発芽行動に移ります。
これを防ぐため、厳寒の時期を選んで、全量・1年分の玄蕎麦を自分好みの状態にまで再調整する訳です。
これを、目で見ていただこう・・・と、今回(このお正月の作業を)写真に撮りました。
写真は、農家の方に収穫と調整を依頼した2021年(令和3年)坂祝産蕎麦の実です。
収穫と調整は、汚損粒(収穫時に茎や葉の臭いが実に付いた物)にならない様にしていただくため重要な作業です。
刈り取りばかりではなく調整もお願いしています。
つまり、自家栽培の玄蕎麦も、契約栽培の玄蕎麦と同じ状態で納めて貰っています。

写真技術は幼稚で、カメラもスマホです。
写りの悪いのはお許し下さい。

さて、最初の写真は、「収穫時の蕎麦の実」です。

左上の痩せた実・これは、収穫時や調整時に処分していただく予定の物です。
他にも・・・「真そば流」では、未だ満足できない状態です。

今年は、播種時の雨の影響で蒔くのがかなり遅れ、台風の襲来が無かった事が幸いし、倒伏が無く、良い状態(汚れが少ない)でした。
つまり、収穫時から、例年より綺麗な実でした。
痩せた実は、収穫時にも吹き飛ばして貰っていますが、未だ未だ・・・この時点では混じり込んでいるのも見受けられます。
見ただけで美味しくない!と感じるものが未だ混じっています。
でも、全体的には良い実で、何より初めから綺麗です。

次の写真は、納品時・つまり調整後の玄蕎麦です。

未熟性の実は無くなり、より綺麗になって来ました。

流石・・・極端に痩せた実は見当たりませんし、光り輝きだして綺麗になっています。
上々の実に仕上がっていますし、勿論、蕎麦の農産物検査も1等です。
申し分有りませんが・・・よくよく見ると・・・やっぱり、そばDa迷人には満足できません。

発見できますか?。
石抜きの再調整で出て来た「土の塊」。

そこで・・・快晴に恵まれたお正月休みの2022年元旦、早速、再調整にかかりました。
この写真は、農家さんの調整後の納品された蕎麦の実です。
4つの石が写っています・・・分かります(見つかりました)か?。
石と言っていますが、正確には畑の土の塊・泥です。
但し、一応、完成品に調整してありますので、こんなに沢山の割合で混じっている訳ではありません。
今回の再調整・石抜機に1回目を掛けて、後ろに出て来た物です。
調整用の石抜機とは、比重撰で、中でも軽い蕎麦の実を前に出し、比重の大きな物を後ろに出す機械です。
石だけを選り出す機械ではなく、重い蕎麦の実が殆どですが、石や今回の泥の塊等重い異物を後ろの出口に選別します。
手刈り天日干し時代の「唐箕」に代わった機械です。
今回ここに写る泥の塊、そのまま石臼に混入したら・・・蕎麦がジャリジャリします。
何軒かのそば屋さんで、この体験をしました(趣味でそばを打っていた頃に、蕎麦粉屋さんから取り寄せた粉で初体験して「このそば何?!」の疑問を持ち始めて、自家製粉をするようになって理由がわかり解決した訳です)。
これ位のことは、自家製粉を始め、少し時間を割けば簡単に解決できることです。
しかし、江戸そば流で「ゴミを食べさせる!」と嫌った理由は、もう少し工夫を加えないと解決できません。
次の写真です。
ここからが、未だ本・指導書には無い!・真そば流の奥義の一つです。

到着した蕎麦の実と再調整後の蕎麦の実のピックアップです。
ヘタの部分の違いです。

上の写真の右の蕎麦の実は、納品時の物からピックアップしました。
赤の矢印、右から左へ・・・調整する事が重要な作業です。
左の実は、石抜きの作業(再石抜き)を終え、その後再磨きを掛けた物のピックアップです。
そばDa迷人は、江戸そば流が玄挽きそばを「ゴミを食べさせる」と嫌った理由は、先の石泥混じり玄蕎麦製粉によるものでは無く、この蕎麦の実のお尻の部分(写真の丸印)・「ヘタ」にあると注目しています。
そばは、他の穀物粉に比べて雑菌が多いと言われています。
それは・・・皮ごと粉にする事に理由が有ります。
この雑菌や泥汚れ(風に吹かれて飛んでくる微塵が外皮に付き、このヘタで滞留)が原因だと考えます。。
蕎麦専用の磨き機(ブラッシング)では、外皮をピカピカにしますが、このヘタを取り除くのは・・・満足な状態にはならず、今有る機械では容易ではありません。
蕎麦の実は柔らかいため、強く磨きを掛ければ割れてしまいます。
穀物検査の時に、この割れが5%以上有ると1等を貰えず、15%以上になると「等外品」となり、米なら「肥料用」となってしまいます。

(閑話休題)
いづれにしても、農家にとって、この等級検査は価格に影響を与えるので、無視できません。
が、そばDa迷人はそば屋のオヤジです。
美味しいそば作りのため、今使える機械で最適な物を選び、その限界までの力を加えて、このヘタ取りに精を出します
そばDa迷人の「真そば」を是非試して欲しいのは、田舎そばのあの黒い色や江戸そばの嫌うごみの味を感じるか否か?です。
江戸そばを愛する人の中にも玄挽きそば(玄蕎麦のまま石臼投入した粉を使ったそば)を「外皮と甘皮の間に魔物が住む」と言って好む人があります。
そばDa迷人は、この魔物を、外皮と甘皮の間にある「発芽酵素」と考えています。
そして、二層構造の甘皮のうち、内側の部分を挽き込む製粉方法を心がけています。
これにより、玄挽きそばでも、黒い色をしたそばにはなりません
つまり、真そば流は、江戸そば流が嫌った理由を取り除き、そばの持ち味を最大限に引き出した(魔物の再登場)美味しいそばを目指している訳です。
蕎麦本や石臼製粉の本等には、玄挽きそばは、外皮を挽き込んでそばが黒くなる・・・と書いたものを見受けますが、これは誤りです。
外皮の繊維は強く、容易に粉にはなりません。
判りやすく例えると、外皮は粒が細かくなっても粉にはならないということです。
40メッシュ位で篩えば幾分落ちてきますが、そばDa迷人の様に80メッシュや100メッシュで篩えば、細かくならない外皮はほとんど混じりません。
混じるのは・・・粉化し易いこのヘタ部分とこれに付着する微塵です。

「どろ」の字、読めますか。
約15袋処理すると、こんなに沢山のヘタとヘタ部分の泥が粉になってきます。
こんなのを食べるの・・・やっぱり嫌ですよね。

つまり、めちゃくちゃ細かい土の粉が、調整で取り切れていないと、そばの色が黒くなってゆきます。
これが癪に障り、この季節に手数と時間を掛けています。
取り敢えず、外での再調整の仕事を終えた蕎麦の実の写真です。

再調整後(「石抜き」→「磨き」→「石抜き」後)の蕎麦の実です。

この後、室内(粉挽場)に持って行き、再々調整で、蕎麦専用の磨き機にかけます。
蕎麦の専用磨き機なら、何故初めからこれに掛けない?の疑問がありますよね。
この機械の開発は、外皮に付いたゴミ取りが中心で、時間をかけていれば、玄蕎麦はピカピカに光りだして、さも美味しそうにはなるのですが、ヘタの部分が取れません。
負荷をかけると蕎麦の実が割れてしまうので、専用機は負荷を少なくして見栄えが良くなるように工夫されています。
残念ですが、蕎麦の実のヘタがそばを不味くすると言う事まで、蕎麦関係者が気づいていないという事だと思っています。
そばDa迷人、ここを一生懸命広報したいと、今回、真そば流のおくぎの一端を披露しました。
未だ未だ、そばDa迷人が時間をかけてやっているヘタ取り磨きも完璧ではありません。
蕎麦の実の調整段階で、このヘタ取機の開発が出来たらなぁ・・・と願っています
この蕎麦の実は、その後も、再々・再調整と繰り返し(最後は篩機と目視)、厳寒時期の自己満足調整?が完了します。

この後未だ・・・篩いかけと目視検査を行います。

1年分の蕎麦の実全部だから・・・3月、否4月までに完了出来たら上々です。
冬の季節のそばDa迷人の定休日の予定の中心は、1年分の蕎麦の実の再調整です。
新そばより真そば!、真そばの色と味の違いを感じていただけたら幸せです。

顔晴りま~す。
そばDa迷人拝

夢とそばを楽しむ会

Meeting to enjoy dreams & soba

そばで日本を健康に!&日本を真の先進国に!と楽しい夢を見る会です。
会長さんや会計さん…お偉いさんは存在しません。いるのはそばの里深萱ふ~どのオヤジ・そばDa迷人が務める“用務員”さんだけ。
とにかく楽しい夢を描きましょう。