この時期のなると「新そばはいつからですか?」や「もう新そばになりましたか?」等々のお尋ねが増えてきます。
本日(10/23)、面白い出来事がありました。
客室から戻ったパートさんが「新蕎麦の話しをされていたお客様が、『これは新蕎麦に間違いない。ね・そうでしょ?』と言われたので、『ここのソバは、窓の外で未だ花が咲いているので、これは、昨年の蕎麦です』と答えましたが良かったですか?」と。
少し前は、こんな感じでした・・・今は、白い花は・チラホラです。
いきなり余談ですが・・・そばDa迷人は、新蕎麦に力点を置かず、“真そば”作りに力を注いでいます。
つまり、新蕎麦が最高なら、更にそれを上回る美味しいそば・素材の持ち味を最大限引き出すのが、真そば流のそば作りです。
この時期になると、新蕎麦を意識し、これを上回る味にしたい!と取組んでおり、「これは新蕎麦に間違いない!」と味わっていただけたこと、嬉しい・有り難い評価と感じました。
ここで、新蕎麦って・・・?を考えてみたいと思います。
先ずは、新蕎麦は美味しいか否か?。
こ・れ・は!、それぞれの口で試して貰いたいと思いますので、ここには記しません。
では・・・「新蕎麦」の定義です。
昔々その昔、冷蔵庫の無かった時代では、前年産の蕎麦が梅雨の季節以降・真夏の暑さで変化し・・・一番美味しく食べたい時期に味が落ちた事から新蕎麦が待たれました。
これが新蕎麦は美味しい!と言う期待論の始まりです。
江戸で誕生し東京で成長した美味しいそばづくり技法が、戦後公開されたことにより、日本中の手打ちそばが飛躍的に美味しくなって、手打ちそば愛好者も増えてゆきました。
そんな手打ちそば再興の中で、台風の上陸することが無かった北海道が、日本中の半分生産する一大産地となりました。
北海道のこのソバは・・・東北地方以北で栽培される夏播種、つまり晩秋収穫の「秋ソバ」では無く、春に蒔いて晩夏に刈り取る「夏ソバ」です。
秋ソバに先駆け、いの一番の新蕎麦として出回ります。
が、しかし(新蕎麦と)謂われの当初は「秋ソバ」を「新ソバ」と言っていました。
夏の蕎麦需要期が終わって、秋に入ってのそば屋の閑散期を補うように「夏ソバ」が、早さを競いもてはやされるようになりました。
「新蕎麦」の発端は「秋新」を指していましたが、夏ソバが新蕎麦に置き換わりつつある現代・消費者の耳に訴えた商魂逞しき状況は、残念・・・と言えそうです。
昔と違って、穀物冷蔵庫の完備された現代では、「エイジング蕎麦」と言われるものの誕生が見られるように、前年(2年・3年それ以上前)の蕎麦であっても逆に美味しくなるんだと言う主張が現れて始めています。
これからの蕎麦の楽しみ方は、「新蕎麦」か「エイジング蕎麦」か・・・を自分の口で確かめる時だと感じています。
蕎麦を愛した江戸文化研究家だった故杉浦日向子さんは、「新そばは、蕎麦の香が少なく趣が無い」と言っておられました。
理由は、新蕎麦は穫れたての為、含有水分量が多く、いつもと同じ挽き方をすると、歩留率が落ちて、蕎麦特有の風味・香りのする「甘皮(種皮)」部分の挽き込み量が少なくなるためです。
余談ですが、「新蕎麦特有の・・・」と時々間違えられるて例えられるほのかな“草の臭い”は、蕎麦の香りではありません。
あれは・・・ソバを刈り取る(汎用コンバインで)時に、蕎麦の実に擦り付けてしまった草(茎や葉)の臭いです。
米の場合だったら“汚損粒”と言って、商品にならないものですが、ソバの場合は、「新蕎麦は、この季節特有の微かな草の香りが・・・」なんてもて囃されているのを見聞きすると、新蕎麦にこんな臭いは無い!と腹を立ててしまいます。
蕎麦の場合も、米と同じで、あれは、間違いなく“汚損粒”!。
そばDa迷人のソバ作り(栽培)は、刈取り時に汚損粒にならない独自の工夫を組み込んでいます。
さぁ・霜が降りました。
ソロソロ刈取りです。
閑話休題・本題に戻します。
「新蕎麦」とは、どんな蕎麦を示しているのでしょう?。
「乾麺類品質表示基準」と言う定めが有り、ここで「蕎麦粉」を30%以上使用すれば。「蕎麦」と表示でき、30%を切る時は「蕎麦粉20%使用」等、使用量を明記すれば蕎麦と表示して良いことになっています。
余談ですが、これは乾麺の定めで、生麺やテイクアウトの麺(そば)には、同様の定めはありません。
極端に言うと、小麦粉100%の麺(うどん?)に、蕎麦殻を灰にして色づけとともに香り付けをして・・・又、茹でてテイクアウト商品にすれば、蕎麦粉0%でも「そば」と表示して販売しても、取り締まることが出来ないのです。
手打ちそば業界では、江戸蕎麦が2・8そば(蕎麦粉8割で小麦粉2割)、長野県の名高い戸隠そばは、蕎麦粉7で小麦粉3割と言われています。
そばDa迷人は・・・そばは、10割は当然で、蕎麦の実の部分取り粉では無く、石臼で蕎麦の実を全部挽き込む「挽きぐるみ」の蕎麦粉を使用したものが「そば」だ!と考えています。
さて・・・「新蕎麦」、麺のそばについて制限法が無いからでしょう?・・・、「新蕎麦」の表現についても取り締まる法律がありません。
よって・・・いつ穫れた物が「新蕎麦」か?の定めがないばかりか、どれだけの新が入っている(100%か1%か?)から「新蕎麦」なのか?を定め・取り締まる法もありません。
一握り混ぜたら「新蕎麦」?!・これじゃあ業界の恥!と考える製粉会社連合会の申し合わせ事項があります。
申し合わせ事項ですから、違反しても罰則規定は有りませんし、この会に未加入の者には、新蕎麦なる文字を使うことに、申し合わせさえ無い訳です。
さてその申し合わせ内容です。
収穫後2か月以内で、これを半分以上使用している物を「新蕎麦」と表示しようと言う内容です。
つまり、この申し合わせをする良心的な蕎麦粉屋さんですら、収穫後2か月以内の蕎麦を50%以上混入するならば、堂々と「新蕎麦」と謳って販売できます。
自家製粉しないそば屋さんでは、この粉を仕入れ、粉屋さんから支給される「新蕎麦入荷」等の幟旗を掲げて誘客営業を開始します。
そばDa迷人は、へそ曲がり?、この「新蕎麦入荷」なるPRは最悪!と捉えています。
なぜなら、新蕎麦が入荷しただけで、使用しているとは言っていないのです。
新蕎麦を入荷させてはいるが、古蕎麦を出す!、ここまで卑屈では無くとも、「新蕎麦使用」と記したとしても、一握りでも新蕎麦を加えてさえいれば、「新蕎麦100%」と表示していない限り罰せられることが無いのです。
本物の新蕎麦を、自分の口で味わいたい時は・・・・?。
良心的なそば屋が新蕎麦表示をする時は、産地や生産者名を表示して、新蕎麦の使用割合をも明記しているはずです。
「新蕎麦使用」や「新蕎麦入荷」なるポスターやのぼり旗で食欲をそそらせるPRをする店は3流店、こんな宣伝を目にしたら「この店はポリシー無いな!」と思う方が増えていって・・・と願っています。
新蕎麦が美味しいか否か?、最近では、この新蕎麦の時期にこそ「エイジング蕎麦」を試して欲しい(食べ比べ)・・・と取組んでいるそば屋さんが増えています。
そばDa迷人は、そばを劇的に美味しく変えたのは、江戸そば流の技術公開とともに、電気・ガス・水道の全国普及が欠かせないと考えています。
江戸そば流を基本に、そばの味を更に美味しくしたいと考え、「新」なる文字を「真」に変え、ソバの栽培・石臼製粉・手打ちの方法に、幾つもの真逆の改善を加えて「真そば流」の完成を急いでいます。
この真そば流で、1年中そばを美味しくし、「日本を健康に、今再び・そばの味革命!」を夢に見ています。
そばDa迷人 拝