美味しいそば作りは・・・。
その昔・・・手打ちそばは、「そば切り」と言われて、地方で誕生し、街道を伝って・・・江戸に到着しました。
江戸は、人口が多く、周辺でソバが栽培されていた事もあって、定着しました。
こうした需要供給を満たす環境であった事が、美味しいそば作りを後押ししました。
更科そばの誕生は、更に美味しいそばを!と、今まで使っていた粉を、再度篩って得た粉を使ってそばを打った事に始まりました。
今は、多くの機械が開発されましたが、昔々は・・・そばを美味しくすると言う事は、本当に難儀・大変な事でした。
今の江戸そばは、殆どが「剥き実」と言って、蕎麦の実の外皮を取り除いてから、石臼に投函して得た粉を使用しています。
理由は、外皮に付着した汚れ(泥やカビ等)が、微細・繊細なそばの味を変えてしまうので、これを取り除く最高の手段!と考えられています。
一方、外皮と甘皮(果皮)の間に、アリューロン層と言うのがあって、外皮を取り除いてしまうと、ここに存在する発芽酵素の多くが削がれてしまうため、旨味成分が欠如する!と考えられており、挽きぐるみそば(外皮のまま石臼投入)を好む人たちの間では、「魔物が住む」と信じられて来ました。
最高に美味しいそばは・・・外皮のままやりたいが、不純物の混入は少しであっても許されません。
日本中の手打ちそばの多くが、剥き実使用に変わって行きました。
もし・・・手打ちそばを食べたときに、「ジャリ・ジャリ」とした物を感じた事があったら!、これぞ、江戸そばの関係者が嫌う・最悪のそば(砂混じり・実は畑の泥混じり)です。
そこまで感じなくとも、見た目の色が黒いそば!、これもジャリジャリまではしない不純物の混入そばなんです。
なぜなら、蕎麦には麺が黒くなるような色を持った組織は無いんです。
そば業界の専門用語で言うと「ほし」と言う部分が、玄蕎麦(外皮の付いた蕎麦の実)のまま石臼で挽いたときは、多量に混じってきます。
ほしの事を外皮が挽けてしまって混入したと説明する方も多いようですが、粗挽き(20メッシュから30メッシュ程度のふるいを使った時の粉)の場合には、この外皮の混入もありますが、60メッシュ以上の細かい目で篩ったときは、外皮が混入する事は殆どありません。
ほしの部分は、外皮の一部?と言えない事は無いかもしれませんが、現代の機械をもって調整しても、顎の付け根部分が取り切れず、細かくなって混入します。
外皮部分では無く、これが「ほし」と言われる物です。
《見えるでしょうか?蕎麦の実に付く顎の部分=未処理の玄蕎麦》
これだけなら・・・まだしも、これが取り切れていないという事は、ここに付いている微細土も除去できていないと言う事になります。
江戸そばの人たちの言う「挽きぐるみは、ゴミを食べさせる!」となっています。
《米用の古い古い精米機を使っての磨き(顎取り)。「ほし」になる部分・顎が舞い上がる!》
しかし、江戸そばに勝る美味しいそば・魔物が住むと言われるアリューロン層に存在する発芽酵素を取り込むためには、ここに付着する汚れを徹底的に取り除かないとあり得ない!と言う事になります。
又・又、しかし・・・です。
やっかいな事に、ソバの実は、水分を少しでも感じると発芽行為に移ります。
穀物専用冷蔵庫で保管し、品質保持に努めていても、梅雨の季節を過ぎた頃に、冷蔵庫から出して、常温状態で放置(色んな調整作業を含む)すると、露ぶいて発芽が始まり、味の変化が起きて来ます。
これを防ぎ、江戸そばに勝る味を作る下作業は、発芽に移らない、厳寒の季節に行わなければなりません(※もっとも0℃でも発芽はあると言われているので、完璧の防御は出来ませんが、味の変化を極限に抑える。14℃以上で大部分が発芽準備状態となる)。
当店の玄蕎麦は、契約栽培農家から、一応・完成品として納められていますが、これは、江戸そば流の外皮を除いた・剥き実蕎麦用の作業完了です。
玄蕎麦で石臼に投入するためには、再度、否、その後もう1回・・・と調整作業を加えます。
時々、お客様から「あれ?玄蕎麦挽きと聞いたのに!白い?」とよく聞きます。
《右から左へ・・・石貫機2台と磨き機に掛けます》
これが、あの昔々、江戸で誕生した「更科そば」を、更に美味しくした・例えるなら「更・更科そば!?」なんです。
つまり、素材(蕎麦の実)の持ち味を最大限、粉に引継いだ手打ちそばの完成です。
正月明けの冬休みの始まりは、先ず「再・石貫」2回と「再磨き」1回を行います。
朝8時に始まって16時30分まで。
昼食は、その場で・・・立って、否、移動しながら・・・おにぎりです。
つまり、みっちり8時間30分作業して、1日に30袋弱(約670kg)しか処理出来ません。
だから・・・天気が良いと何日も続きます。
1袋23kg、重い!・疲れます・・・古希老人よ・顔晴れ~と自ら、励ましながら、冷蔵庫と機械まで、何度も何度も動き回っています。
この後、粉挽き部屋に担いで移動し、別の機械を使用した磨きと石貫は・・・この後、未だ未だ重ねます。
そばDa迷人好みの素材に仕上がるまで・・・だから、毎年、春まで続きます。
それでも・・・所謂「ほし」、完璧に取り除く事は出来ません。
諦めず、極力!(味に変化が出ないところまで)磨きあげます。
本日(1月16日)、なんとか・・・全量、一次石貫と磨き、完了。
明日からの、夢を大きくした、江戸そばの拠点・東京へのそば研修旅行に出発出来ます。
そばDa迷人の真そば流は、江戸そば流を基本に、真逆の改善策も恐れず重ねる事から始まっています。
更に美味しいそば(自分好みの味のそば)作り、未だ未だ江戸そばを学びに、行って来ま~す。
そばDa迷人拝