今ふたたび、そばの味革命コラム

Column

真そばの味研究所

試して下さい・旬!・?・おろしそばの味。

厳寒のこの時期、大根が・・・寒さで凍らないようにと耐えて・耐えて糖分を蓄えています。
つまり、大根は1年の中で、一番寒いこの季節が・・・辛いばかりでは無く、甘さを発揮してくれる訳です。
そばの里深萱ふ~どの「おろしそば」は、水を一滴も使わず、大根のおろし汁に花かつをと少しの醤油・だしを加えただけのシンプルな仕上げです。
是非、この・他所では味わえない・おろしそばを、甘さが加わった“旬”?(3月迄は確実に甘さが際立つ)の時期に試してみて下さい。


そばの里深萱ふ~どの「おろしそば」は・・・
越前そばのルーツのおろしそば・が・ルーツ!

そばの里深萱ふ~どの「おろしそば」は、趣味のそば打ちを楽しんでいた頃に、福井の知人から「越前そばのルーツを食べさせるから、2月か3月の時期に来なさい」とお誘いを受けて・・・感動した事から始まりました。
これまでも、福井に行けば、決まって越前そばを食べていたのですが、「越前そばのルーツ?」と興味が湧き、仲間を誘って・・・3月も半ばを過ぎていましたが出掛けました。
余談ですが、4月になろうかという時期だったのに、帰りの時間には猛烈な雪が降り出し、ヒヤヒヤの思いで帰りました。
今なら・・・あの状態でも・間違いなく、高速は閉鎖だった事でしょう。
全てが驚きで、且つ貴重な体験でした。

ボク等が着くと・・・そばは既に打って仕上げてありましたが、「じゃぁ始めるね」っと、大根おろしの作業が始まりました。
その絞り汁にだし醤油を注ぎ、そばを茹で始めて・・・、洗って絞めたそばを丼に入れて、この汁をぶっかけて「さぁ~どうぞ」と。
つゆの中にそばをぶっ込み、おろした大根をぶっかけるだけの今の越前そばとは真逆です。
全員(5人)が、顔を見合わせて「ナンジャこれ!・今までの越前そばとはまるで違う!・美味い~!!!」と。
食べ終わると「お代わりいいですか」と言うと「ボクも」・「私も(チャーボーです)」と。
3杯目も「もっと良いですか」と。
「良いよ。全部食べてって良いよ。大根はそこの畑で抜いてくるから」と。
食べ終わって・・・「美味しい越前そばを食わせるからと誘って貰いましたが、これって越前そばでは無いですよね。まるで味が違うと思いますが?」と尋ねました。
「これが越前そばのルーツなんだ。越前そばは、この地方ではもう何百年と食べられているが、一番美味しい食べ方はこの方法で、寒い時が一番美味しいと言われていたんだ。もっとも、その頃は越前そばでは無く、おろしそばだったんだけどね。段々と温かくなると甘さが抜けるんだ。夏の暑い時期には辛いだけになる。一番美味しいのを食べて貰いたかったから2月から3月までに来ないかと声を掛けたんだよ。今の越前そばは、天皇陛下(昭和)がそばを食べて、帰邸された皇后様が『あの越前のそば美味しかったね』と言って下さり、それが、お付きの方からお礼と共に伝えられた事から越前そばという名前になったんだ(昭和22年の両陛下の福井県行幸)」と。
そして「寒い時期ばかりでは無く、一年中越前そばを売りたかったから、このスタイルでは無く、だし汁の中に、摺りおろした大根を入れるだけのものが越前そばになったと言う訳さ。ワシが家で食べる時は、こうして楽しんでいる。雪の下になってしまうような時期に大根を育ててね。良かったら、帰りに大根を抜いて行くか?」と、庭の片隅で大根だけ栽培してある畑に案内して貰い、1本ずつ頂いて帰りました。
凄いカルチャーショック経験でした。


今の・・・福井県の越前そば

それまでに食べていた・越前そばとはまるで別物・脳裏から離れない味でした。

そば屋のオヤジになると決めた時、メニューに「おろしそば」を入れるか?・入れないか?、迷いました。
理由は、おろしそばの旬!?!と言いたくなる程・甘さが出る時期と、辛さが際立つ真夏の時期との味の開き、その大きさです。
つまり、四季毎に、別物と言っても過言無いほど味が違うからです。

辛いのが苦手なそばDa迷人の背中を押してくれたのは、趣味の時代のおろしそばに「このなんとも言えない辛さ、これこそ何処にも無い美味しいおろしそば。最高や」と言って貰っていた事でした。
少しだけ触れますが、今メニューにあるおろしそば、趣味の時代のそれとは、味付けを変えています。
理由は・・・趣味の時代は予約と言うか日を決めてそば会と言う催しでやっていました。
あの感動の越前そばのルーツのおろしそばを意識して、アレより美味しく!と考えて、自然塩とだしは昆布のみで工夫をしていました。
これは・・・時間がかかりますし、昆布は日持ちしません。
大根はオーダー事に摺りますが、だしは・・・そんな訳には行かないので趣味時代の昆布使用に変えて醤油をベースに鰹節で味付けしています。
あの頃とは違いますが、今も、あの感動した越前そばのルーツと言う味の再現、否、それより更に美味しく・何処にも無い美味しさを意識して作っています。
この時期のそばは、夏の辛いのが好みの人には、物足りない!?となる事でしょうが、厳寒に耐えた糖の甘さが際立つおろしそばの味は恐らく初体験となるでしょう。
そばは盛りに限る!なんて方にも、「これは良い・驚きの味」と感動して下さる方が何人もあります。
初めての方にも、そば通の方にも・・・是非試して欲しい手打ちそばの食べ方です。

さて~、この季節になると、このおろしそばで、決まって思い出す事が有ります。
今は亡き帝国ホテルの総料理長だった巨匠・村上信夫さんが、ボクの住む町(美濃加茂市)に講演に来られた際に、このおろしそばを食べに来て下さり、たいそう気に入って下さった事です。
そして・・・「総料理長がね、『あのおろしそばが美味しかったから、今年も講演会を計画してね。行くから』と言われましてね・・・」と、次の年も、同じ時期に案内して下さいました。
その頃は、予約を受けていなかったので、この方は、先ずお一人で、せ・き・と・りに来て下さり、待つ間に、有り難い話をして下さいました。
嬉しい・有り難い出来事を思い出して、1日3組・平日に限っての予約・・・これを機会に検討しました。
村上さんは、その後も、亡くなった年まで、決まって同じ時期に来て下さっていました。
お供の方から「これを使って下さい」と、村上さんとチャーボーが写った記念写真と、叙勲時の写真を頂きました。


お供の方が写し「良かったら、これ・使って下さい」と。
この季節になると・・・あの出来事が浮かんできます。

時々、これを見ながら・・・感動の日を思い出しています。
ご注文は、決まっておろしそばとビールでした。
そばを一口運んでは「美味い」、次を運んで「美味い~」と。
あれから(2005年没)月日は流れましたが、おろしそばと村上総料理長さんとの思い出は切っても切れないものとなっています。
因みに・・・それまで、村上さんは偉大な人で常々「料理は愛情だよ」と言われている事位しか知らなかったそばDa迷人は、その後、その原点が早くに母親を亡くし「お母さんのように愛情と真心と工夫をこめた料理を作りたい」と語っておられたと知り、そばの里深萱ふ~どの女将・チャーボーの持論・「料理は愛情とアイディァよ」とダブらせています。
余談ですが、チャーボーの工夫と愛有る料理、年を重ねる毎に・・・益々美味しくなっています。


定休日の・・・そば屋の女将と大将の朝食は?
定番枠を飛び出した・・・ガレット(チャーボー作)・です。
愛・と・アイディアが一杯

オット・ト・ット・・・ソバ(栽培)・蕎麦(石臼製粉)・そば(手打ち)に特化したそばDa迷人の仕事は、そばを茹でて盛るところまで・・・で、そばの里深萱ふ~どのそば以外、つまり、味付け(つゆを含む)は、全てチャーボーのあの細腕にかかっております。
有り難い事に、そばDa迷人とチャーボーの味覚は、殆ど一致しており、試作を重ねる時や外食の時は、「これがこうだからこの味で、あそこをああするとあの味がして美味しくなるのでは・・・?」なんてやっています。
因みに、そばの里深萱ふ~どの開店前時の検食(盛りそばで出来具合を視る朝一の味見)は、毎日チャーボーが勤めてくれています。

さてさて、今が旬のおろしそば、よく勘違いされますが、そば屋にありがちな辛み大根使用ではありません。
そば屋の辛み大根は、山葵のように箸休めの薬味として使用するもので、これを搾ってみても、あれだけ(丼に入れる程)の汁は取れません。
それに・・・あの当店では使わない絞り粕は、産業廃棄物で、只今はソバ畑の有機肥料として戻しています。
それに、ぶっかけ方式なので沢山の汁を使いますし唯々辛いだけでは事足りません。
そんな訳で、甘さも兼ね備えた大根を・・・辛み大根に負けない位の辛さを引き出す技法で摺りおろしています。
つまり、山葵の代わりに使う辛み大根なら下ろし金で摺れば十分でしょうが、そばの里深萱ふ~どの大根おろしは摺り身を使わず汁だけを使用するので、強力・完全を意識したおろし方・大根の組織を摺り潰ぶす事で引き立つ辛い汁を得ています。

さてさてこの大根、昔から身体に良い食べ物と言われています。
最たるものが「大根時の医者いらず」ですね。
これは、大根の収穫時は、こぞって大根を食べて健康なので、お医者さんが暇になると言われていた事なんです。
では、何が、何に・・・良いのでしょう?。
纏めてみました。

大根に含まれている主な栄養素と効能・効果です。
★イソチオシアネート
強力・完全におろす・そばの里深萱ふ~どのおろしそばで高まります。
それは、大根の細胞を破壊することで発生するイソチオシアネート、これが辛味の原因です。
これには、抗菌作用や血栓の予防効果があり、がんの抑制効果も期待出来ると言われています。
★ジアスターゼ
一番よく知られていると思いますが、大根に含まれている消化酵素です。
デンプンを分解し、食べ物の消化を促進し胸やけや胃もたれを防ぎます。
二日酔いにはもってこい・・・と言われています。
そばを食べ終わったら、そば湯を注ぎ込んで、この大根の汁を残さず飲み干すと、一層薬用効果が期待出来ます。
★ビタミンC
抗酸化作用が期待できるビタミンCが含まれています。
ビタミンCは、女性のみかたで美肌を保つために必要なコラーゲンの合成にも欠かせない成分で、老化や免疫機能の低下を抑えます。

大根・健康機能食品の王様?・人生100年時代の申し子みたいな食べ物なんで、毎日おろして・食べたくなって来ますよね。
否々、ここでは割愛しますが、健康寿命を延ばす食材は蕎麦・と信じて疑いませんが、大根を合わせる事で、効果は更に高くなりますよね。
とは言うものの、余談ですが、そばDa迷人は・・・残念ながら、辛いのが苦手なんで・・・時々する味見以外殆ど食べていません・・・😔。
この季節は・・・おろしそばの味見、夏よりは多く食べています。
味覚を司る5基礎味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)に、辛味が無い(痛点で感じる味)ので・・・と、言い訳をしています。
いずれにしても、食べ物は、科学的な薬品物質では無いので、直ぐには効きませんし、薬用効果を期待するには毎日取る必要があります。
うぅ~ん、毎日は無理だけど・・・季節毎や時々でも・・・それなりの効果はあります。
それより何より、好きなるには、美味しいものを食べる事から始まりますよね。
余談中の余談ですが、そばDa迷人は、40歳になるまで、美味しいそばを食べた事が無かった、否、子供の頃に不味いそばを食べて、以来、そばが大っ嫌いでした。
それが、40歳の時に、美味しいそばに出合った事でそばの虜になりました。
そして・・・受け継いだDNA病(脳梗塞)?、そば屋のオヤジになって、毎日のそば食の効果?・未だ経験無し!と喜んでいます。
食生活が改善し始めて、米を美味しくと白米化した江戸時代に、蔓延した江戸患い(脚気)対策として、そばが毎日1食・食べられるようになりました。
この頃に、5穀にも入らない蕎麦が、最高の健康機能食と認識されました。

食生活が充実し脚気の心配は激減しましたが、食べ物が欧米化した今の時代は、脳梗塞等循環器系の病が・・・日本人にも恐怖となって来ています。
江戸時代の様に、1日1食の蕎麦食を復活させて健康寿命の延伸を・・・と夢に見ています。

先ずは・先ずは・・・かって日本中のそばの味を革命的に美味しく変えた江戸そば流(そば打ち技法)を意識して、更にそばの味を美味しく!と進める「真そば流」の味と、際立つ甘さが売りの季節(2月・3月)に、他では味わえない・そばの里深萱ふ~どのおろしそばを・・・ご賞味いただけたら幸せです。

そばDa迷人(そばだめいと)

夢とそばを楽しむ会

Meeting to enjoy dreams & soba

そばで日本を健康に!&日本を真の先進国に!と楽しい夢を見る会です。
会長さんや会計さん…お偉いさんは存在しません。いるのはそばの里深萱ふ~どのオヤジ・そばDa迷人が務める“用務員”さんだけ。
とにかく楽しい夢を描きましょう。